蚕の品種とカイコ飼育セット

蚕の品種

現在の蚕の品種は、世界中の蚕の原種から良い特徴をもつ蚕を選び出して、掛け合わせて作られました。
実用品種の研究の歴史は長く、人工のえさでも食べる蚕(広食性)、病気に強くじょうぶに育ち、きれいな質のよい糸を作るように、すぐれた特徴を持った新しい品種が常に研究され作り出されました。

保存蚕品種の原産地

地理的蚕品種の主な特性

欧州種体が大きく、成長が遅い。
暑さ、病気に弱い。糸が太く、多い。
中国種暑さ、病気に強い。糸は少なめで
細い。繭の形は楕円が多い。
日本種糸はやや多く、やや太い。繭の形
がくびれている。(俵型)
東南アジア種暑さ、病気に強い。1 年の間に世
代を3 回以上繰り返す。(多化性)
地理的蚕品種のほかに、突然変異種もあります。

保存蚕品種の在来種と改良種

保存蚕品種は地理的蚕品種の分類から、更に在来種と改良種に分けられます。(画像クリックで拡大)

表は横にスクロールできます。

 日本種中国種欧州種東南アジア種
在来種
青白

青白(せいはく)

小石丸

小石丸(こいしまる)

諸桂

諸桂(しょけい)

緋紅

緋紅(ひこう)

伊黄繭

伊黄繭(イタリーこうけん)

トルコ黄繭

トルコ黄繭(トルコこうけん)

ピュアマイソール

ピュアマイソール

改良種
旭光

旭光(きょくこう)

朝陽

朝陽(ちょうよう)

  

いくつかの保存蚕品種の繭の写真をのせました。
保存蚕品種はたくさんの種類があり、農業生物資源研究所では、地理的品種が296種類、突然変異種が174種類保存されています。

Q1.「どうして、たくさんの品種を交配して実用品種を作るの?」
A1.「二つの異なる系統の品種を掛け合わせると、親より優れた特徴をもった子が出来る事があります。
これを、『雑種強勢』といいます。体が丈夫になり、繭も大きくなるため、生産性が優れます。
そのため、蚕の品種改良は品質のよい絹糸の安定した生産に大きな役割を果たしています。」

Q2.「カイコ飼育セットの蚕が卵を産んだのですが、孵化した幼虫に模様が違うものが混じっています。」
A2.「カイコ飼育セットの蚕品種は交雑種になり、交雑種同士を掛け合わせても、元の品種にはなりません。 蚕品種を生産するためには、その原種(原蚕)、または原原種(固定種)までさかのぼって掛け合わせ、親となる蚕を作らなければなりません。 このように、いろいろな品種の育成には親となる品種(固定種)が多く必要になります。 固定種は、保存蚕品種として国の機関や大学などで大切に保存、維持されています。」

カイコ飼育セットの蚕品種ができるまで

普通蚕品種(ふつうさんひんしゅ)

絹糸を取る白い繭

普通蚕品種とは、生糸を生産するために用いられる品種で、蚕糸業を支える大変重要な品種です。
代表的な品種は、春には春の気候に適した春嶺×鐘月、夏から秋は夏秋の気候に適した錦秋×鐘和が生産されます。

春嶺×鐘月の交配 錦秋×鐘和の交配

限性品種(げんせいひんしゅ)

オスとメスが違う色の繭を作る

繭の色がオスが白色、メスが黄色になり、羽化の前に安易に雌雄の区別が出来ます。(限性黄繭:げんせいこうけん)
その特徴により実験によく用いられています。品種改良のために人工的に突然変異を起こさせました。親の蚕も同じ特徴を持ちます。

黄白の交配

黄繭(おうけん)

黄金色の鮮やかな繭

カイコ飼育セットに使用している黄繭品種。人工飼料でも育てやすく、桑の葉で飼育すると鮮やかな黄金色の繭をつくります。

里山黄金の交配

品種の図の説明

四元交雑である実用品種を生産するためには、原原種→原種(原蚕)→実用品種の順に生産されます。 「春嶺× 鐘月」を例にとると、「春」×「嶺」,「鐘」×「月」というように最初に原原種を交配して、 原種(原蚕)の「春嶺」と「鐘月」を生産し、「春嶺」と「鐘月」を掛け合わせることで「春嶺× 鐘月」 が生産されます。 原原種の「春」,「嶺」,「鐘」,「月」と原種の「春嶺」,「鐘月」は固定種ですが、実用品種の「春嶺 鐘月」は一代交雑種(F1)になります。

出典

返田助光(1991)「保存蚕品種とその特性」『カイコ遺伝資源の保存と利用』農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所.
URL:http://www.gene.affrc.go.jp/ex-nises/bombygen/doc7.html

清川雪彦(2004)「多様なる世界の蚕糸業-多化蚕から野蚕まで」『Discussion Paper Series A No.457』一橋大学経済研究所.
URL:http://www.ier.hit-u.ac.jp/Common/publication/DP/DP457.pdf

蚕業技術研究所(2009)『養蚕』p.88-98.
URL://www.silk.or.jp/silk_gijyutu/yousan.html

SilkNewWave「105.春蚕用蚕品種「黄白」(1990)」『農林水産省における主な蚕糸試験研究成果(1904 ~ 2000 年)』.
URL:http://www.nias.affrc.go.jp/silkwave/hiroba/FYI/research-topics/topic105.htm

山本俊雄(2001)『特徴ある蚕品種繭の作出とその利用』独立行政法人農業生物資源研究所 昆虫生産工学研究グループ.
URL:http://www.nias.affrc.go.jp/silkwave/hiroba/FYI/kaisetu/yamamoto.htm

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